「また会議で決めきれなかった。」
そんな日が続くと、手元のタスクは増えるのに、心はどんどん軽くならない。資料はスライド40枚。がんばった分だけ“説明”は充実したはずなのに、最後の一押し——意思決定だけが遠い。
思い返せば、議題は途中で増殖し、論点は枝分かれし、誰もが“良かれ”と思って意見を足す。結果、何を・いつまでに・誰がやるのかは霧の中。現場に戻れば、結局、次の一歩が出ない。
一方で、忙しいあの人は不思議と早い。会議に持ち込むのは薄い紙、たった一枚。
書いてあるのは目的・施策・締切・指標だけ。読み上げる前に、全員がうなずき、10分で可否が出る。
「特別な才能なのか?」と疑ったけれど、実はそうじゃない。“一枚にする”という制約が、迷いを削り落としているだけだった。
大切なのは、完璧な資料より、動ける判断。
そのために用意したのが、本稿で紹介する 「1ページ戦略メモ」。A4一枚に思考と段取りを圧縮して、会議の冒頭1分で“決める”をつくる——そんなシンプルな仕事術です。
ここから、作り方→運用→失敗の回避策→実例の順で、凡人でも再現できる形に落とし込みます。今日は、会議の重力から抜け出す最初の一歩を。
Problem(何が問題か)
- 会議で論点が増殖し、決めるまでが遅い。
- 企画書は丁寧だが、要点が散らばり意思決定者が迷う。
- 現場に降ろす頃には条件が変わり、実行スピードが落ちる。
Empathy(ここがポイント)
- 「完璧な資料」を目指すほど、着手が遅くなる。
- 議事録はあるのに、“次の行動”が誰にも分からない。
- 上司ごとに重視ポイントが違い、説明するたびに資料を作り直す。
ここで効くのがA4一枚の制約です。思考の“余白”を削ぎ、決めるべきコアだけを残します。大部の資料は“補遺”に回し、ファーストビューで決める。
Solution(解決策:A4一枚の型)
A4一枚に、以下の9ブロックだけを置きます。余計な装飾は禁止、名詞+数値+締切で書くのがコツ。
[1] 目的(Why)
上位目的と成功状態(定量+定性)。例:新規CV数月200/NPS+10pt
[2] 成果物(What)
今回スコープで出す具体物。例:LP ver1/広告3種/FAQ10本
[3] 主要顧客(Who)
ペルソナ1行。例:25-34歳 兼業ブロガー/月3万円副収入を目標
[4] 仮説(Insight)
決め打ち仮説を1〜2行。例:初回体験の“詰まり”は登録フォーム
[5] 施策(How)
3本まで。例:LP短縮/CTA一体化/比較表追加
[6] スケジュール(When)
W1: 構成/W2: デザイン/W3: 実装/W4: AB開始(締切日入り)
[7] 指標(KPI/KGI)
主要KPI3つまで。例:CVR, CTR, 滞在時間
[8] 体制・責任(Owner)
責任者1名、実行2名、レビュー1名。連絡チャンネル
[9] リスクと打ち手(Risk)
主要リスク3つ+即応策。例:素材遅延→代替写真, CV低迷→見出しAB
ルールは「3つまで」。目的・施策・指標は3を超えない。超えたら優先度が崩れ、現場の意思決定負荷が跳ね上がる。
Action Steps(今日からの導入手順)
Step 1|既存PJを1ページ化する(30分)
- 直近プロジェクトを選び、上の9ブロックに現状ベースで埋める。
- 空欄があってもOK。埋まらない=論点と理解する。
Step 2|15分レビュー会(週1固定)
- メンバー3〜4人で“読み合わせのみ”(説明プレゼンは禁止)。
- ルール:①目的に刺さっているか ②3つまで守れているか ③締切と指標は数字か。
- その場で優先度を1→3で再配分。
Step 3|会議の“入場券”にする
- 企画・稟議・進捗の冒頭1分は必ずこの1枚を掲示。
- 詳細資料は補遺として後段に。意思決定者は1枚だけで方針可否を出す。
Step 4|週次ABと“訂正ログ”
- 毎週、施策の1箇所だけAB。勝ち筋を“訂正”で更新。
- 1ページの末尾に訂正ログ(日付/変更点/理由)を追記し、迷いの再発を防ぐ。
Tips:
ファイル名は2025-10-プロジェクト名_1page_v03.pdfのように日付+v番号で管理。
よくある失敗と回避策
- 目的が“手段”になっている
- NG例:SNSでバズる → 手段。
- OK例:無料体験申込を月300件(SNSは手段候補)。
- “全部やる”で優先度が死ぬ
- 施策は3つまで。やらないリストを明記する。
- 数字が曖昧
- KPIは桁と単位を固定(例:CVR 2.0%→3.0%)。
- 責任者が“会議体”になっている
- Ownerは固有名詞1人。会議は責任を持たない。
- 更新されない“過去の真実”
- 訂正ログに最終更新日。古い前提で議論しない。
ミニ実例(社内施策のケース)
- 目的:採用応募を月20→35件(半年で)
- 仮説:求職者は「一次情報」を重視。社員の生声が不足
- 施策:①社員インタビュー10本(動画化)②募集要項の“期待と現実”明文化 ③応募フォームの必須項目削減
- KPI:PV→応募CVR 1.2%→2.0%/滞在時間+30秒
- スケジュール:W1構成/W2撮影/W3編集/W4公開+AB
- Owner:人事M/実行:人事2+広報1/レビュー:役員1
- リスク:撮影遅延→代替テキスト/法務レビュー→前広申請
このレベルの具体度なら、会議10分で可否が出るはずです。
Future Vision(“一枚”が組織OSになる)
「1ページ戦略メモ」は、個人の仕事術で終わりません。
- 企画・稟議・振り返り・採用・顧客提案…全工程のファーストビューに採用する。
- 組織の意思決定OSとして、速度と再現性が揃います。
- 訂正ログが学習資産となり、新人オンボーディングも加速。
小さく始め、大きく標準化。まずは自分の担当領域から。
すぐ使える「1ページ戦略メモ」テンプレ(コピペ可)
# 1ページ戦略メモ
目的(Why):
成果物(What):
主要顧客(Who):
仮説(Insight):
施策(How):①/②/③
スケジュール(When):
指標(KPI/KGI):①/②/③
体制・責任(Owner):
リスクと打ち手(Risk):
訂正ログ(Date/Change/Why):
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まとめ
- A4一枚の制約が、論点を削ぎ、決める速さを上げる。
- 9ブロックに名詞+数値+締切で落とし込む。
- 会議の入場券にして、週次AB→訂正ログで学習を回す。
コメント歓迎
- あなたの今週の案件を、上のテンプレで1ページ化すると何が空欄になりますか?
- 施策を3つに絞るとしたら、何を“やらない”と決めますか?
- 実際に使ってみたビフォーアフター(会議時間/意思決定スピード)をコメントで教えてください。


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